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菅野潤は1956年生まれで78年からパリに留学、とりわけヴラド・ペルルミュテールに学び、現在エコール・ノルマルのピアノ科講師をつとめている。フランス盤にはライヴでメシアンの「幼な児イエズスに注ぐ20の眼差し」を収めたものがあるとのことだが、スタジオ録音としては、東京で録音され仙台の一会社から発売を見た、この小品集がおそらく初めてであろう。初めにケンプによるバッハ作品が三曲おかれ、つづいてモーツァルトの幻想曲ニ短調、シューマンの「アラベスク」に「トロイメライ」、ショパンの「雨だれ」、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と流れゆくが、たんなる愛奏小品曲集では片付けられないものが、この37歳になるピアニストの演奏ぶりから如実に感じとれる。「主よ、人の望みの喜びよ」に始まるバッハの名曲三篇を聴くだけでもわかるが、この人はたんにピアノを鳴らすのみではなく、ピアノの音の中に己の声、己の歌を込めようとつねに念じているかのようだ。誤解のないように急ぎつけ加えると、彼の演奏スタイルは端正で、どこにも誇張はないし、胸にもたれる情緒過多とも無縁である。それでいて、これだけあたたかい音楽を奏で得るのは持って生まれた資質に由来することなのだろう。全八曲、演奏時間ほぼ35分はCDとしては短すぎるが、価格も二千円と抑えてあるので、非良心的とはいえない。今後もぜひ録音(もとより実演も)を聴いてみたいピアニストである。
<レコード芸術1993.12 濱田滋>
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