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愛と寛容の音楽

菅野 潤

2006年、モーツァルト生誕250年祝賀の今年、ヨーロッパは格別暑い夏となった。六月にザルツブルクの友人から思いがけず音楽祭のプログラムが届き、自分の演奏する別の音楽祭の準備もあったが、矢も盾もたまらず四日間の時間を空けてザルツブルクにやって来た。
 今回は祝年ということで、モーツァルトのオペラと音楽劇のすべて、二十二作品の上演を行うというのである。円熟期の名作もさることながら、普段あまり舞台にかからない、若い頃の作品を見、聞くのが楽しみだった。
 改装成って新たにモーツァルトに捧げられた祝祭小劇場で、アンナ・ネトレプコをスザンナに迎えた話題の「フィガロの結婚」の総練習に立ち会えたのも良かったが、「牧人の王」、「ルチオ・シッラ」の二作の公演は期待を裏切らなかった。
 瑞々しくも芳醇な音楽、「牧人の王」のオブリガートのヴァイオリンと秘めやかに語らうかのような主役のアリア、また「ルチオ・シッラ」の終幕での劇的な緊張の高まりなどモーツァルトの音楽を聴く喜びを堪能した。
 考えてみれば、この二作とも主題は王の寛容である。作曲の契機は君主の祝典のためであるにせよ、後年の「ティトの仁慈」にしても同じだが、為政者の寛恕、またもっと広く「愛」ゆえの「赦し」という主題は現代の私共にも強く訴えるものと思う。
 「愛はすべてに優るもの」という「牧人の王」の終曲に、遥かな時を越えてモーツァルトの肉声を聞く思いがした。 (了)〜2006.8〜


 

 

 

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